空ゴト日和

本とゲームに埋もれた日々

7/7

中村文則去年の冬、きみと別れ』を読み終わりました。

とてもパズルちっくでした。あの人があれで、あそこがそう繋がるのかと、思わず最初から読み直して確認したくなるようなミステリー的ギミックに溢れた小説でした。

そう、ミステリーだったんですよ。

ミステリーを書く人だと思わなかった。まだ2冊しか読んでないのでどんな作風の人なのか把握しきれてないところはあるけど、これに関してはとてもミステリーだった。

前半部分で、犯人であるとか関係者がいい具合に狂っていて、その狂気具合に触れ、揺れ動く主人公の心理状況にどうなるかと目を奪われていたら、後半から徐々に明かされる真実とその仕掛けに思わずページを見返し、そして気が付けば前半のその心理描写すらその仕掛けに絡み取られていて、その構成の上手さに目をみはりました。

これだけ書けるのならもはやミステリー作家で良いのでは?と思ってしまいますが、そんな声が聞こえないということは他の作品がそういう風ではないということなんでしょうか。

ところで、この前『R帝国』はイマイチだったなんて言ってしまいましたが、そんなことはないですね。面白かった部分もたくさんありました。ただ後味があまりに悪すぎてそれまでの過程がすっ飛ばされて最悪の気分だけが残ってしまったんですね。私は、わりとそういうところがあります。終わりよければ全て良しという言葉がありますが、その逆もしかりで、終わり方一つで作品に対する印象ががらりと変わってしまいます。特に、頑張ってる人達が報われなかったり、悲運で終わったりすると、しかもそういうのは大体作者は敢えてやってるんですよ、それがまたムカついて悪印象しか残らない。その振れ幅が私はかなり大きい。

ともあれこの『去年の冬、きみと別れ』に関しては、とても私好みで、作者に対する興味は深まりました。他の作品もがんがん読んでいきたいです。