空ゴト日和

本とゲームに埋もれた日々

10/16 読んだ本「バチカン奇跡調査官 三つの謎のフーガ」

バチカン奇跡調査官 三つの謎のフーガ (角川ホラー文庫)

3つの中編が収められた短編集。今回とても面白かった。

「透明人間殺人事件」

ローレン、アメデオ、フィオナと、本編では中々見ない三人組が関わる事件の話。

衆人観衆の中、インタビュー中の議員が突如倒れ、死亡。なんと、胸には銃弾が。音もなくまわりはカメラに囲まれていて怪しい人物もいない、一体なぜ?という状況に、それまで数々の難事件を解決されたと言われる国家治安警察隊であるアメデオの元に事件の依頼が来た。しかし、実はアメデオは今まで犯罪者でもあるローレンの力を借りて事件を解決していたに過ぎず、現在脱獄し逃亡中である彼と連絡を取ることは難しく大ピンチに陥るという大変面白い状況から話は始まる。導入部分でさえ既に面白い。アメデオが完全に某眠りの探偵さんなんよ。そして、本編では、平賀やロベルトをサポートしていた謎めいた人であるローレンの私生活が垣間見える。

事件自体も、衆人観衆、何もないところで突然倒れた、という情報から自分的には、何となく、近づいた誰かが仕留めたか、元々体に何かが仕込まれていたかどちらかだろうなと考えていたのだけど、ああ、なるほどと個人的にはおっと思わせた。藤木凛さんの作品が本格ミステリー的な意味で評価されることってあまりない気がするけど、個人的にはもっと評価されていいとも思うんですよね。この手のもので重要なのは現実的に可能かどうかではなく、説得力だと思う。これもまた各々の感性によるかもしれないけど、私としては感心させられることがとても多い。

「ダジャ・ナラーヤの遺言」

シン博士とロベルトが活躍する話。
ロベルトが、いい人すぎて若干引いちゃった。
シン博士から親戚の遺言状が暗号で書かれており、助けて欲しいと連絡が受けたロベルトは、すぐに有休を取って現地であるスリランカに渡る。スリランカに。有休を取って。いや、友人のためとはいえフットワーク軽すぎないかと、びっくりした。現地に到着した二人は、両方ともそれなりのトッププロ(暗号スペシャリストと情報局リーダー)なので、あっさりと暗号を解読し一同からは感激される。ここら辺のさくさく具合はとてもかっこいい。そんなただでほいほい呼んでいい人レベルではないのだよと言いたくなるが本人たちは何とも思ってないんだろうな。そして、ロベルトは大変人たらしだった。

スパイダーマンの謎」

これはいつもの平賀&ロベルトのコンビの話。とある田舎に現れた、森林伐採に反対するという”蜘蛛男”のことが気になった平賀がロベルトを誘い休暇がてらその村に行くことに。残された動画や色々な人の証言などを駆使して、蜘蛛のように壁を這い進む男の正体の真偽に迫る。ある意味いつもの奇跡調査のような雰囲気。平賀とコンビだとロベルトはどうしても常識人枠になってしまうんですね。一人だとこの人も相当の相当だと思うのですが。このシリーズの世界観は、かなりの意味で現実に近い時空列を取り扱ってながら、未来的に感じることが多く、それは本来ならファンタジーものだと断じてしまうソレであり、同じ時空でありながら少しずれた平行世界な雰囲気をも感じてとても独特だなと思います。

個人的にはあまり見ない組合わせの三人組の話が面白かった。ローレンとアメデオが過去に解決したらしい事件の話とか読んでみたい。もしくは、ローレンと誰かの組み合わせでもいい。天才が好きなので天才+犯罪者とか好きしかない。