空ゴト日和

本とゲームに埋もれた日々

8/29 「薬の魔物」感想メモ~永続性の肯定

多くの物語には必ず終わりがあり、完結することこそ美しいとされることが多いように思います。また物語の世界の中でも、永遠はなく、全ての物事には終わりがあり、それまでをしっかりと生きるというメッセージ性が強く、”永遠”であることはどちらかといえば人の領域から忌避される意味を持たされる場合が多いです。しかし、この「薬の魔物」の世界では珍しく永続性を永遠を良い意味で描かれているような気がします。これは元々主人公が、死を救いと考える特殊な人生観を持っていて、大切な人々に出会うことによって、この世界でもっと生きていたいと考えるようになるという背景を持つことによるものなのだけれど、それでもほぼ永遠を生きる魔物と一緒に生きていくのだと決意するネアに、私は私の中の何かが肯定されてように思えて、とても胸にきました。

私は、ずっと物語は永遠に続いて欲しい、ずっと幸せであって欲しいと、ずっとずっと思っていて、それでも世間のほとんどの物語には終わりがあり、それこそが正しいと言われることが多く、例えあってもそれは悲劇とされる場合が多く、でも、現実に永遠などないのだから、物語にこそ永遠はあってもいいのではないか、ずっとそんな風に思ってました。いわゆる異種婚姻物語においても、人外と人間が結ばれる時、その寿命はなぜか人間側に合わされることが多く、なぜ逆ではいけないのかと思うことも多かったのです。

そんな中、「薬の魔物」の世界でも寿命問題があり、魔物の王であるディノはほぼ永遠(多分)の命を持っており、おそらく(断定はされてないが)その伴侶であるネアも同じくらい生きるのではないかと言われて、ずっと人としての”死”を意識していたネアが、大切な人が幸せでありこの世界に飽きて心が摩耗しない限りはずっと一緒にいます、とディノに伝えるシーンに、こういう幸せの形があってもいいんだと思えて本当に嬉しかった。否定的な意味での永遠ではなく、ずっとずっと幸せでありたいという願いの形が見えて、この「薬の魔物」の物語がどれだけ幸せに溢れた世界であるのかと実感しました。

 

そんなわけで、「夏休みと見知らぬ城3」読み終わりました。

もう何度目かの夏休み、指輪の中の避暑地に遊びにいき、躾け絵本に追いかけられたり、みんなでお料理を作ってわちゃわちゃしながら夜におしゃべりをするという幸せな時間のお話でした。アルテアさんが、躾け絵本に蹴りいれるシーンが想像したらかっこ良すぎてとても好きです。

本格的に残り話数が少なくなってきたので本当にゆっくり読んでいきたい。