空ゴト日和

本とゲームに埋もれた日々

9/9 読んだ本「ボックス21」

楽しい作品を読んだ後は、本当に楽しい気分になって、嬉しくてふわふわして、そういう気分になるだけなのに、重い作品を読んだときこそ、何かを発散するために、書き殴りたいという衝動に駆られるのはなぜでしょう。

 

ボックス21 (ハヤカワ・ミステリ文庫)


相変わらずヤバい作品でした。読み終わった後に感じるのは悪が悪として裁かれない気持ち悪さ。デビュー作の『制裁』からしてそういう話だったのだけど、警察小説でありながら、犯罪を追い憎む正義の側が主人公であるはずなのに、裁かれるのは見せかけの悪だけでその奥に見える狡猾な存在は見逃されて、最後の最後に読者だけにそれが明かされるものだから、その気持ち悪さを抱えながら本を閉じざるを得ない。
本来、私はこの手のバッドエンディングタイプの作品は好きではないのだけど、こうも惹きつけられるのは作者の書く文章表現(翻訳が良い疑惑もあり)がとても私の好むものであるからだろう。それぞれの人物の心理描写を巧みに表現する文章力に、それ生かした物語の構成力。誰がどういう状況で、なぜこんなことを、どうしてこんな目にあってしまうのか、加害者や被害者、同情できるもの、できないもの、それぞれをある意味とてもわかりやすく表現されていて、物語の先の先が見たくてたまらくなる。
終わりはとても、気持ち悪く、我慢できないもの。それでも、この作者の作品はまた読みたいとそう思わせる。

私がこの作者の作品で初めて読んだのはシリーズ4冊目の「地下道の少女」で、実をいうと、今でもそれが一番面白かったかなと思うのだけど、それがあまりに強烈で、だからこそ、その前の作品を読んでみたいと思い、デビュー作である『制裁』から順々に読み始めたのだけど、思った以上にヤバかった(救いがない)なという思いが続いています。

 

まあ、だからといって、こういう内容の話が好きかと聞かれたら、決して好きではない。
なので、今は、軽い楽しい話が読みたい。