まず表紙がとても素敵で手に取った作品。本来食べ物系の話は苦手なんだけど、チラ読みしてみると主人公自身が料理をしない人間で、それでまかない付下宿屋に住むことになるというわけなので読めるかなと購入。
会社を辞めてフリーター生活をしていた主人公が、格安家賃でまかない付という条件に惹かれて猫目荘にやってきて、そこの変わった住人たちと関わっていくうちに自分の生き方を見つけていくという話。
食べ物系の作品といえばどちらかといえば主人公が料理をする側でお悩み相談系な話が多いのかなと勝手に思っていたのだけど、本作は、作られる側で、人生に迷っているのも主人公で、そこで料理と一風変わった住人たちと関わることで、道を開いていく、主人公自身の物語であるというところが良い。
知らない世界を知っていくというのは読み手にとってもそうで、個人的にはユーチューバーである山登りの人の一日に関わる話が面白かった。取材とかしたのかな。私は興味ないものは全然見ない知らないので、すごく興味深かった。ちょっと見たいなと思ったけど、この人のユーチューブは存在しない。
最後はわりと普通の着地点に落ち着くのだけど、個人的にそこは少し肩すかしを感じてしまった。それまでの話がわりと刺激的だったので、それ以上の何かを期待してしまったのかもしれない。しかし、本作の主張したいことの一つが変わった人たちとも主人公みたいな普通の人も一緒に過ごすことはできるよねということなのだろうので、物語の趣旨としては合ってはいるのでしょう。
お初の作者だったのだけど、中々面白かった。他の作品も読んでみたいです。
(わりとネタバレ)
最終的に、主人公が料理をしないトラウマを克服して料理をしてしまう人になってしまうので、そこは本当に残念だった。